うりぼうのダイアリー

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仕訳で理解するライブドア事件その1

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かってライブドアが入居していた六本木ヒルズです。

こんにちは、うりぼうです。

最近、仕事で組織再編の論点調べることが多々あり、関連するエントリも何度かご紹介しました。

その過程でライブドア事件に関連する記事に遭遇しました。当時はうりぼうはまだ学生で、連日のニュースを見ていたけど何一つ事件の概要を理解できなかったのを思い出しました。


当時は、大学生になったかならなかったぐらいの時期で、高校卒業程度の政治経済の知識ぐらいしか物事を読み解くのに必要なツールがないような状況でした。

 

今は社会人になって、簿記会計など理解に必要なツールを一通りそろえることができましたので、当時理解できなかったライブドア事件を仕訳に起こして整理してみます。

今さら感が強いのですが、会計初学者の方にとってはライブドア事件を通して、日商簿記1級程度のレベルの学習ができるよい機会となっています。


▼参考にしたのはこちらの記事

www.itmedia.co.jp

 

ライブドア事件は複数の容疑から構成されていますが、ホリエモン自身も最大の論点と言っている自己株売却取引をとりあげます。

これが事件の中で会計的に最もテクニカルな話になります。

仕訳全体


▼記事のホリエモンの発言から想定される一連の仕訳をまとめてみました。
(数値は仮)
スマホではなくPCで全体で参照されることをおすすめします。

 

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※3社の買収予定会社を「Target会社」としてまとめています。
クラサワとウェブキャッシングドットコムの2社+1社(宮内さんの財布と表現しているもの)をまとめています。

「一時的に別の証券会社を経由してSPC※(ファンド)を作って、①そこにお金を(ライブドアから)貸し付けて、③いったんその(買収予定会社の)株主に(SPCから)現金を払って株式をもらって、②その後市場で(新規発行した)ライブドア株を売ることによって、④その(SPCへの)貸し付けを戻す」という方法をとりました。

 

そこでそのSPCがもうかった分をライブドアの子会社、⑤ライブドアファイナンスに対して配当という形で戻したのですが、「ライブドアの連結決算で利益に計上したことが違法だ」と言われているのです。

 

 

ライブドア単体仕訳

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SPC単体仕訳※

※SPCはライブドアグループの連結対象からは外されていたが、SPCで記帳されているならばこうであっただろうという想定仕訳

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ライブドアファイナンス単体仕訳

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ライブドア株主およびTarget会社株主仕訳※

※各社の株主の仕訳は仮に記帳していたならばこうであっただろうという想定仕訳で、ライブドアグループでの連結上は何も影響はありません。

 

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Target会社からライブドアへのTarget会社株式売却時の仕訳

 最終的にSPCとTarget会社の株主の間でLD株式とTarget会社株式の売買が行われていますが(仕訳②)、Target会社がライブドアグループ入りするためには、Target会社からライブドアへTarget会社株式が売却されていないといけませんので、⑥の仕訳を追加しています。これにより、ライブドアがTarget会社株式を保有することになり、Target会社がライブドアの子会社になります。

 

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<⑥仕訳投入前>

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<⑥仕訳投入後>

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ちなみに、ホリエモンの説明では、「SPCにお金を貸し付けて」となっていますが、ライブドア株式の間違いだと思います。でなければ、SPCがのちにライブドア株式を売却することはできませんので。

 

連結修正仕訳

 仮に、Target会社の買収時のBSが以下だったと仮定します。

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上記の仕訳以外に、連結処理で以下の仕訳を起票します。
Target会社とLDの投資資本の相殺仕訳となります。

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連結BS・PL

ここまでの①~⑥仕訳とTarget会社BSおよびTarget会社とLDの投資資本の相殺仕訳を加味すると、連結BS・PLは以下のようになります。

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※LDFは本業がファイナンスのため、単体上、SPCからの配当は売上高に計上しますが、LDグループ全体からするとファイナンス事業は本業ではないため、営業外収益へ組替えられるという想定から、営業外収益としています。

受取配当金15がそのまま、BS上も利益剰余金を構成します。

検察側の主張では、SPCはLDグループの連結対象に含めなければならず、受取配当金は営業外収益に計上されるべきでないということになります。

連結修正仕訳(SPCがライブドアグループの連結対象だった場合)


SPCがLDの連結対象だった場合には以下の仕訳が起票されるべきでした。

SPCが支払った配当金とLDFが受け取った配当金はグループ内取引としてなかったものとされ、消去されます。

また、SPCで行われたLD株式の売却は自己株式の売却に該当し、自グループの株式を株式市場で売却しただけで、自分で利益を計上してはいけないということになります。
検察側が主張するように利益ではなくBSの資本剰余金として計上すべきだったことになります。

修正仕訳として、LDの株式売却益から資本剰余金に振り替えています。

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 連結BS・PL(SPCがLDの連結対象だった想定)


SPCがLDの連結対象だった場合、 あるべき追加仕訳を加味すると、連結BS・PLは以下のようになります。受取配当金は支払配当金と相殺されたことで当期純利益は0になり、BSの上も利益剰余金ではなく資本剰余金として表示されます。

 

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以上です。



とりあえず本日は一連の会計処理だけまとめてみました。
粗雑な解説でしたので、後日補足のエントリを追加する予定です。 

それではまた、うりぼうでした。

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