こんにちは、うりぼうです。
今日は昨日のエントリに引き続き、のれんに関する論点を補足して見たいと思います。
昔働いていた会社で上司にふと聞かれて答えられなかったことがありました。
「買収した会社の税務のれんの償却って何年になったんだっけ?」
当時は税務なんか全くわからず、勤務先の会社はIFRS適用だったため、
-税務上ものれんって計上されるのか
-税務上ののれんは償却するのか(IFRSでは会計上は非償却)
という論点について「????」のまま、知っている人に丸投げしたままだったことを思い出しました。
いいタイミングなので調べてまとめてみます。
のれんの種類
1. 会計上ののれん(M&Aにより発生するのれん)
-子会社化により発生する連結上ののれん
-合併により発生する単体上ののれん
2. 税務上ののれん
1. 会計上ののれん(M&Aにより発生するのれん)
-子会社化により発生する連結上ののれん
これは昨日のエントリで説明した内容です。
買収対象の会社の資産負債の差額と買収対価の差額の一旦暫定ののれんとして計上し、PPAの手続きを得て調整の後に確定されるものでした。
子会社(売り手)、親会社(買い手)のどちらかでのれんが計上されるのではなく、
連結修正仕訳にて計上されるものでした。M&Aのうち、A(Aquisition)は子会社化を意味します。
-合併により発生する単体上ののれん
M&Aのうち、M(Merger)、 吸収合併です。売り手(買収された会社)は消滅し、買い手(買収する会社)に吸収されるタイプです。基本は子会社化により発生するのれんと同じで買収する会社に単体上仕訳が計上される点で異なります。買収された会社の資産、負債もそのまま取り込まれます(PPAによる資産負債の評価結果も同様)。
税務上ののれんとは何ぞや?
吸収合併があった際の、買収された会社の資産負債の差額となります。
税務上ののれんは、会計上ののれんとは必ずしも一致しません。
特に、負債側については、会計上、引当金が積まれている場合は債務が確定しないものは税務上は認めないという考えにより、差異が発生します。
IFRSではのれんは償却しないのですが、税務上ののれんは一律5年で償却します。
日本基準では20年以内での償却なので、税務上の5年で償却したときの差額が税務上の調整項目となります。
ここで冒頭に戻ると、M&Aで子会社化した際の税務のれんの償却はどうなるか?の答えですが、連結修正仕訳によりのれんが発生するため、単体上は税務上ののれんはそもそも発生しない。そのため、償却を考慮する必要はないが正解です。
のれんのように中身がはっきりしないものですが、買収時に支払っている金銭価値は明確なため税務上も資産計上し、よくわからないから定額5年という短期(日本基準上の償却期間と比べて)で償却してしまうことは合理的です。
しかしながら、なぜ当時の上司は税務上ののれんについて尋ねてきたのか、今となっては謎であります。子会社化の後に合併でも検討していたのでしょうか。
永久に分からない話。
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以上です。
それではまた、うりぼうでした。