こんにちは、うりぼうです。
前回のエントリに引き続き、ライブドア事件の会計処理(自己株式を使った利益計上スキーム)についての補足です。
▼前回のエントリ(自己株式を使った利益計上スキームの全仕訳)
なぜライブドア事件が理解できなかったのか?
当時、学生だったうりぼうがなぜライブドア事件を理解できなかったのか、
今は理解できるが、当時なぜ理解できなかったのか、不足していた知識や特殊な要因を列挙してみました。
- ①簿記・会計の知識→本日のエントリではココを補足
- 仕訳の起票方法
- 連結会計
- 自己株式の取引
- 仕訳の起票方法
- ②法律の知識
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- 商法・会社法
- 株式交換
- SPC法
- 投資事業有限責任組合契約に関する法律
- 商法・会社法
- ③ファイナンスの知識
- アセットファイナンス
- SPCを使った資産流動化スキームの基本概念
- SPCを使った資産流動化スキームの基本概念
- アセットファイナンス
- ④その他
- 専門用語への拒絶感
- 言葉の定義があいまい
- 使用者により使われている言葉が違う
- 知らないことを理解しようとする貪欲さ
- 専門用語への拒絶感
①簿記・会計の知識
要するに、「会計基準に基づく仕訳記帳という技術を取得していなかったので、個々の取引および取引の流れを整理できなかった」ということです。
取引を理解するには簿記(複式簿記に基づく仕訳)は取引の視覚化に最適なツールであると思います。
簿記で学んだ仕訳を使いこなすためには、会計基準に従って起票できるスキルが必要です。
ライブドア事件を理解するには、法人単体に適用される会計基準に精通していることに加え、グループ会社全体を一つの法人とみなして会計処理を行う、高度な連結会計基準の知識が必要となります。
連結会計
ここでいう連結会計の知識とは何なのかというと、グループ会社を一つの家族に見立てて処理をするためのものです。
語弊はありますが、グループ会社との取引は親会社からの圧力で如何様にもコントロールできるため、取引の影響をコントロールの影響を受けていないグループ外部との取引にのみに限定するような処理を行うとイメージしてください。
連結会計の論点
SPCをライブドアグループに含めるか含めないかで会計処理が大きく変わってきます。
ライブドアグループからSPCに対して影響力を講師できる立場にあるものがSPCの経営に関与しているか?
-NOの場合:SPCをライブドアグループの連結対象に含めない
→ライブドアが採ったスタンスです。SPCを連結対象に含めないことで株式の売却益を配当収益という形に姿を変えることで、グループ外部との取引を連結売上高として認識しました。
-YESの場合:SPCをライブドアグループの連結対象に含める。
→SPCで計上された株式の売却益は資本剰余金に計上され、ライブドアグループの連結BSに取り込まれます。
また、SPCのライブドアファイナンスに支払った配当金(支払配当金として費用に計上)とライブドアファイナンスがSPCから受け取った配当金(受取配当金として収益に計上)はグループ間取引としてなかったものにします。つまり、連結売上高に与える影響は0です。
また、親会社のライブドアとSPCおよびTarget株式会社の投資と資本の消去(親会社のSPCに対する投資勘定と、ライブドアから出資を受けたSPCおよびTarget株式会社の資本金勘定の消去)を行い、グループ内部の出資・被出資取引もなかったものとする必要があります。
自己株式の取引
株式を売却したときは、売却時の時価と取得時の時価との差額を株式売却益として利益認識します。
しかしながら、自分で自分の株式を市場で売却した場合は、利益(PL)ではなく資本剰余金(BS)として、純資産の一部を構成します。
ホリエモンが、自己株式の売却益は利益にも資本にもなりうると主張しています。
これは、当時はSPCを連結対象にするかどうかで株式の売却益が配当という形で売上となるか資本剰余金となるかで会計処理が変わってくるが、どちらにもなりうるという学説はあるし、自分は専門家ではないためよく分からないという意見を主張されていたのだと思います。
ホリエモンが利益と言っているのはライブドア株式の売却において、売却にかかる手数料を除けば株式売却益はほぼ利益とみなせるためだと考えます。
▼ホリエモンの主張とは下の引用部分のことです
ちょっと難しい話が長くなったのでみんな退屈だと思うのですが、つまり、非常に会計的に難しいところ、どっちが正しいのか分からないようなところでむりやり「お前は正しくないんだ」と言っているのが、ここの2つ目の争点の一番のポイントになるところなのです。「SPCを連結するか、しないか」「SPCが出資元の株を売買した時に出た利益を、BSに付けるかPLに付けるか」という非常にあいまいでよく分からないようなことを無理やり有罪にしようとしたのがこの事件の本質なのです。
ライブドアのスキームが巧みなのは、SPCの連結外しによってSPCで生じた利益を、配当という形に姿を変えることによってライブドアファイナンスで売上に付け替えている点だとうりぼうは考えています。
これは、税務の世界でもよくあるのですが、取引の実質は同じなのにも関わらず、名称が変わるだけで別の取引であるかのように見せかけ租税回避を行う行為に近いのではないでしょうか。
脱税と記載せずに租税回避と記載しているのは、本人は課税を免れることができるかどうか不確かな状況で、明らかに脱税を行おうとしている意図があるとは認められないだろうが課税されなかったらラッキー(自分が採ったポジションを肯定もできるし)というチャレンジングな行為も含まれているため、一概に明らかに法を犯すような脱税行為ではないと言えないものも多くあるからです。
(一般に世に出てくる租税回避で追徴課税を受けているニュースでは「脱税」とひとくくりにされていますが、当事者は脱税を行うという明らかな意思がないにせよ、自分が選択した税務上のポジション(処理方針)を採っている方もいると想定されるからです。
こうすれば課税される、されないなどの明言が法令上規定されていないことで、自らが判断した結果として租税回避を行ったとして裁判で認定され世に脱税したと出回っています。)
ライブドア事件でいうと、このような場合、SPCを連結しなければならないという明確な会計基準が存在しない時代に連結外しを行った点において、明らかな粉飾の意思はないが、自分達が行った会計処理が粉飾と認定されたケースがライブドア事件でありました。
この自己株取引以外にも売上を水増ししたり、株式交換における交換比率算定をライブドアグループに有利になるように第三者がやったように見せかけ自分達で行っていたため、自己株式取引においても粉飾を行う意思があったとみなされたのかもしれません。
▼当時ライブドアを監査していた港陽監査法人のパートナー会計士が書いている本も、SPCが出てくる箇所の理解のために参考にさせていただきました。
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本日は「①簿記・会計の知識」のところまでの補足になります。
それではまた、うりぼうでした。